MG物語 第3話 今までとはちがう

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MG物語

この会社に入ってのボクの仕事は非常に単純明快・・・と思われた。

そりゃそうだろう。
だって、臨床心理士としての実績を買われての入社。
要はヘッドハンティングってやつで、カウンセリングを行うだけで良いとばかり思っていたわけだ。

確かに精神的に疲れた会社員の方に対してカウンセリングをすることには違いなかった。
ところが以前とは明らかに違うことが一点。

それはクライアント様(顧客様)の企業がどのような業界なのか。
そしてどのような業務形態によって勤務されている方が対象なのか。
あらかじめ念入りに下調べをしておかなくては、まったくといっていいほど対応ができないという部分だ。

カウンセリングの時間は平均すると1回60分。
ところが合間の時間はほとんどが次の面談者に関する情報収集で終わってしまう。


パソコンを使うのはあまり得意ではなかったけれど、
さすがに毎日これだけの情報収集を行っているとイヤでも慣れてきてしまうものだね。

1か月2か月と経過するごとに、会社にも慣れて少しばかり余裕も出てきたことを覚えている。

さて、次の面談者は・・・ふむぅ、事務職だけれどもOA事務という肩書になっているな。
パソコンを使用した事務員ということだろうか。
今の世の中、パソコンは当たり前の時代になったのかもしれないね。


ふむふむ、健康診断の心理テストであまりよろしくない結果であった・・・と。
それで初回の面談、担当がボクになったという流れだね。

あくまでボクの仕事は話を聴いて、つらい思いを少しでも軽減できれば・・・という部分に集約されるのだ。
病気による精神的な落ち込みの可能性がある場合には、それはカウンセラーの仕事ではない。
治療が必要な場合には、まずは医師による診察と治療が優先されるのだ。

もちろんそうした傾向が早期に発見できるという意味では、ボクはこの仕事に誇りを持っている。

つらい思いを抱えている人が、そのつらさを軽減できるならば、それはきっと本人にとっても良いことだろう。
そう信じてボクは仕事に向き合っていたのだ。


・・・コンコン・・・


「はじめまして、よろしくお願いします」

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